「新たな時代に向けて、人類の思索の炎をかきたてよ。」
アルベルト・シュバイツァー
1875年1月14日-1965年9月4日。ドイツの神学者、音楽家、医師。神学博士から医学への転向を決意し、医学博士の学位を取得。その後、アフリカでの医療と伝道活動に生涯をささげた。「生命への畏敬」の概念で世界平和にも貢献した。主著に『我が生活と思想より』。
「わたしは人間の魂の中に、死よりも強い精神を探し求める。」
ロマン・ロラン
1866年1月29日-1944年12月30日。フランスの小説家、評論家。平和主義と反ファシズムを掲げて、理想主義的ヒューマニズムの立場から多くの作品を発表した。1915年にノーベル文学賞を受賞している。主著に『ジャン・クリストフ』『魅せられたる魂』等。
「私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。」
ハンナ・アーレント
1906年10月14日-1975年12月4日。ユダヤ系ドイツ人の政治哲学者、思想家。ナチスが台頭したドイツからアメリカへ亡命し、大学で教鞭をとった。ナチズムの全体主義を分析し、それを生み出す政治思想を考察した。主著に『全体主義の起源』等。
「愛は、人間の実存において唯一の満足のいく答えである。」
ジョサイヤ・ロイス
1900年3月23日-1980年3月18日。ユダヤ系ドイツ人の心理学者、哲学者。フロイトの精神分析を社会的性格論に結び付けて展開。愛についての論理を人間の能動的な性質として基礎づけた。主著に『自由からの逃走』等。
第五部「復活」
人間は無限に人間を超えていくことで人間になり得る。その魂は個別のものではない。打ち寄せる波のように入れ代わり立ち代わり現れ、世代ごとの後継者が生まれている。それは一つの宇宙の遺言である。魂の新生は人間が生きている限り続いていく。否、魂の生まれ変わりこそが人間である。根源から湧きあがってくる常に同じ様式を、同じ過程を経ることによってさらに健全なものへと高め続ける。それが幾千年にわたり育てられてきた人類の形式であった。浄化の炎のなかで魂はよみがえり、自己の上に高められ、神の力まで押しあげられる。生命の内容は生きながら永遠へと回収されていく。これがはじめて全体の復活を意味する。
人生はどこまでも真理の予感に発している。その神秘をわれわれは何らかの方法で個人的生命の中に体験している。人間の世界とそれを覆う高次の世界の絆、予感においてであれ啓示においてであれ、あるいは思想においてであれ、確かに私たちはその世界を行き来している。ある人間が死後の世界に属していればいるほど、また全人類に属していればいるほど、その魂の歩んだ痕跡は人類の一部になっていく。心は万世に生きて脈動し、思想はたとえそれが知られずに終わったとしても決して滅びることがない。精神的なエネルギーは不滅なものとして、あらゆる場面に書き記されてゆく。しかしその理想の聖火が、われわれの手中から融け去りつつある。今信じているのは自己が考えた思想ではないという不自然さが、多くの魂の成長を貶める。この呪縛を焼き切るために、思索の炎をふたたび燃やさなければならない。
人類をふたたび思索の道に引き戻さなければならない。真理は世界についての直観的な把握にある。根本的な思想はすべて、人類の内なる声と直接に結合している。その知られざる宝を秤で量ろうとすれば、魂はさらに深い闇の中へ迷い込むだろう。人間の中には存在する深い叡智、その思想の中心に据えられている倫理を体験しなければならない。それは人類の中心に据えられた光である。浄化の火に焼かれた思想だけが世界を肯定する力を持つ。その洞察力だけが神が人間に与えた力である。
祝福は、人類全体にふたたび広く育まれるだろうか。存在しないが、しかしふたたび成るべき歴史の大系。深く隠れて存在し、ほとんど見えなくなっている回復の軌道。その黄金に似た法則を発見し、人類を恒久の大地に導くことができるだろうか。人類が病んでいる重い病の治療は、魂自身がその源泉との信頼をふたたび回復することによって自らを新たにし、ここに初めて地上に復帰するだろう。その理想を地上にもたらすのは現実に生きるひとびとである。
魂の先導者たちよ、人間を沈黙さしめ、もって自らの思惟の光を発見させよ。人間自身がこれを必要とするばかりでなく、そのために自ら求めることを学ぶように助けなければならない。ひとびとを迷妄の大海を渡って真理へと向かわせ、闇の淵から地上へ引き上げなさい。そして彼らとともに思想の高潮と一体になり、ふたたび人間となりなさい。人類の理想の殿堂にいかなる烈火が炎々としているか、その高みを自らの生命を使って体現しなさい。これを指揮するのは生きた人間として正しく成熟した最高度の魂である。
人間よ、汝はただ汝のためにこの地球に生きているのではない。永遠の仕事に従事しなさい。そのために、あなたが打ち立てるべき人間性をできるかぎり広げなさい。自他の境目をなくし、大いなる理想の建設に参与しなさい。ぜんたいの幸福に向けて、個人を超えた生き方をめざしなさい。未来のことは忘れて心の中に生きなさい。沈黙を前にしてもひるまない自由意思のみが、圧倒的な夜明けを経験することができる。人間が自己にとって真実であり続けるというエネルギーだけが人類を新たに復活させる。
自分ひとりの幸福を求めるのをやめ、あなた自身から魂を解放しなさい。漠然と生きることをやめ自らの生に真の価値をもたらしなさい。自己の存在を所有すべきものとせず、神秘的なるものとして体験しなさい。あなたがすでに考えている愛の行為を、意識的な思考の中に繰り返して強化しなさい。それはかつて人類が抱いた理想の一部である。宇宙があなたの中に志を成し遂げられるようにしなさい。摂理と一致する瞬間、あなたは大いなるものに生かされていると感じるだろう。そのような他律的な生き方こそ、真の自己としての道であると気が付くだろう。小さな自我を捨てた生き方こそ、真の自己に忠実な生き方であると感じられるだろう。
燃えている火が消えるように、人間は死んでゆく。その一瞬にむけて心の霊光を高めなさい。われわれは宇宙の贈り物の上に立っている。この紛れもない一瞬の夢の中で、あなたはいつでも他者の中にいたのだし、これからも他者の中にいつづけるだろう。そこでは純粋なものだけがこの世に残っていく。それは愛である。愛のみが人間の死を越えて続いていく。相手のあるところのものを愛することによって、愛される者はその愛に一層相応しくなろうとするだろう。しかしそれを求めたり、所有しようとしてはならない。あなた自身が無限の要素として、もっとも美しいものを地上にそそぎ出しなさい。自己のためではなく人類のために悲しみ、喜びの涙となりなさい。その一滴が永遠の川のしずくとして広がっていく。このことを宇宙はすでに知っている。
過去という存在は救われた現実であり、瞬間は永遠に通じている。これがあらゆる現実化されたものの意味である。運命の声が要求することを忠実に果たしていく限り、運命はかならずその通りになっていく。われわれが夢の中で出会ったように、人生は生まれた後にも前にも続いていく。その光の中からまっすぐ響いてくるものを受け止め、自己の責任に応えなさい。あらゆる個性を焼き尽くし、この世において永遠の価値あるものを求めなさい。その決意を何度でも新しくたしかめ、その方向へ歩みつづけなさい。
あなたが愛の中に身を投げ出すとき、目に見えない神殿の中でわたしたちは巡りあうだろう。わたしとは神である。あなた自身がひとびとに光を授けなさい。そして最終的には魂となりなさい。人間は自己自身の中心点を神にゆずりなさい。人間は自発的に消えていき、ただその余地をあたえなければならない。